選挙制度について

昨日は衆議院議員選挙でしたので、今日は選挙制度についての記事を書こうと思います。

特に難しい内容ではなく、高校レベルですのでほとんどの方はご存知でしょうが、お気軽にご覧ください。

(1) 選挙の定義

選挙とは、一定の集団にあって、投票など定められた手続きに従い、代表もしくは特定の地位に就く者を選出することである。


(2) 選挙の原則

選挙は以下の4つの原則に基づき実施される。

a) 普通選挙:人種・財産に基づいて投票権を制限してはならない。なお、普通選挙は、20世紀になって各国で採用された。制限選挙と対になるものである。

b) 平等選挙:一人一票の原則、投票価値の平等は守られるべきものとする。なお、日本の小選挙区制においては、人口格差を2倍以内とする目標が課されている。不平等選挙と対になるものである。

c) 直接選挙:国民は自らの代表を直接選出すべきである。なお、アメリカの大統領選挙は例外的であり、形式上、間接選挙を採用している。この間接選挙は、直接選挙と対になっている。

d) 秘密選挙:誰が誰に投票したかは秘密とすべきである。なお、日本の第1~6回衆議院選挙では、記名捺印が求められた公開選挙であった。これは秘密選挙と対になるものである。


(3) 選挙の機能

選挙の果たす機能には、具体的には以下のようなものがある。

a) 利益表出機能:人々の間で多様に分化している意見や利益を、政治という舞台に登場させる機能。

b) 利益集約・統合機能:政党や候補者への支持や同調を集約することで、多様な意見や利益を統合し、国家・集団・政治システムとしての一体性を確保する機能。

c) 政治的リーダー補充機能:有権者は自分たちの将来を託す人物を自らの手で選ぶ。指導者の側からは、議席を確保するためには有権者の意向を考慮する必要がある。これにより、有権者による「指導者統制」が可能になる。また、政治的リクルーメント機能とも呼ばれる機能である。

d) 政策選択機能:候補者や政党が掲げる公約・綱領からよいと思うものを有権者が選択する。つまり、将来の政策を選択する機能である。

e) 政策評価機能:選挙は過去の政策を評価する機会でもある。有権者がそれまで行われてきた政策を支持すれば与党が勝利し、しなければ野党が勝利する。

f) 正統性付与機能:選挙を行うことで、政治体制は有権者の支持を得たものとして正統化される。


(4) 選挙制度の種類

選挙制度は各国で様々であるが、大きく分類すると、a) 小選挙区制、b) 大選挙区制、c) 比例代表制の3種類に類型化される。

a) 小選挙区制:各選挙区で、得票数の最も多かった候補者のみ当選する制度。多数代表制とも呼ばれ、純粋な小選挙区制は、アメリカやイギリスなど少数の国々でのみ採用されている。

b) 大選挙区制:各選挙区で、得票数の多かった候補者から順に、複数の当選者を出す制度。投票用紙に何人の名前を記すかにより、単記式(1人)、制限連記式(2人以上かつ議員定数未満)、完全連記式(議員定数と同数)に区別される。

c) 比例代表制:各選挙区で、得票率に応じて各党に議席を配分する制度。

①当選基数を決定する計算方式

 ①-1) ドント式:得票数を整数で割り、その商の大きい順に議席を配分する方法。このドント式は、比較的、大政党に有利とされている。

 ①-2) サン・ラゲ式:得票数を奇数で割り、その商の大きい順に議席を配分する方法。

 ①-3) 修正サン・ラゲ式:1, 1.4, 3 ・・・と割っていき、その商の大きい順に議席を配分する方法。

 ①-4) ニューマイヤー方式:(全議席数×その党の得票数)÷全得票数で、小数点以上の分は議席が確定し、残った議席は各党の商の小数点以下の大きい順に配分する。ドイツは、1987年選挙でドント式からこの方式へと変更した。

②当選者の決定方式

 ②-1) 単記移譲式:有権者があらかじめ候補者の名前が記されている投票用紙に自分の選好順に番号をつけていく方式。第一順位の候補者の得票数が事前に設定された基数以上であればその候補者を当選とし、さらに余剰票と当選見込みのない候補者の票を、次位候補者に移譲して順次当選者を決定していく。

 ②-2) 名簿式:政党があらかじめ候補者名簿を作成し、有権者はいずれかの名簿を選択して投票する方式。以下の4種類がある。

 ②-2)-a. 絶対拘束名簿式:有権者は名簿に手を加えることはできず、名簿を作成した政党のみを選ぶ方式。

 ②-2)-b. 単純拘束名簿式:候補者に順位はついているものの、有権者も候補者への順位を変更できる方式。このため、当初の順位が変動しうる。

 ②-2)-c. 非拘束名簿式:候補者名簿に順位をつけず、有権者は政党、名簿記載の候補者個人のどちらにでも投票できる方式。

 ②-2)-d. 自由名簿式:パナシャージ(有権者が各政党の名簿から候補者を自由に組み合わせて自分の投票用紙に記入する方式)とワイルド(有権者が各政党の名簿から候補者を自由に組み合わせることも、名簿に記載されていない候補者も、自由に投票用紙に記入することもできる方式)がある。


(5) 小選挙区制と比例代表制の特徴

a) 小選挙区制:①死票が多い、②大政党に有利⇒二大政党制⇒政治が安定しやすい、③候補者と有権者が密接になりやすい、④ゲリマンダーが発生しやすく、得票率のわずかな変化が議席率を激変させうるため、世論の変化に敏感

b) 比例代表制:①死票が少ない、②中小政党も排除しない⇒多党制⇒政治が不安定化することもある、③候補者と有権者が疎遠になりやすい、④議席配分の算定手続きが煩雑


(6) 中選挙区制

各選挙区から3~5名の当選者を単記式で選出する制度。大選挙区制の一種であり、少数党の候補者にも当選の余地を残しているため、少数代表制とも呼ばれる。かつて、日本の衆議院選挙で採用されていた。


(7) 混合選挙制

小選挙区制と比例代表制を結びつけて選挙を実施する制度。一つは、ドイツの下院(連邦議会)で採用される小選挙区比例代表併用制、もう一つは、日本の衆議院やロシア、イタリア、韓国などで採用されている小選挙区比例代表並立制である。



以上が選挙制度の基本的な内容ですね。大学生はもちろん、社会人は誰でも知っていることですから、中高生も軽く目を通しておいてくれると嬉しいです。

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